さぽろぐ

暮らし・住まい  |札幌市北区

ログインヘルプ


2005年06月27日

してはいけないミス

image.jpg

許す、ということ

 バスケットの指導をしていた頃、こんなことがあった。

 今から12,3年前、大事な試合の前日に私は学校行事の打ち上げで飲みすぎてしまい、当日遅刻をしてしまったことがあった。監督が遅刻なら、試合は没収試合となり、私の学校の負けが決定する。私が遅れて会場に行くと、生徒達は没収試合にもかかわらず、私抜きで試合をしていた。たとえ勝ったとしても上にいけないのにだ。試合は後半、うちのシューターが3ポイントを2本連続に決め、中が開いたところにパワーフォワードがゴール下を制し、意外な大差となった。
 没収試合が終わり、ベンチに戻ってきた生徒に私はあわせる顔はなかったのだが、生徒は全員ニコニコしながら私にこう言った。
 「なんだよ先生、また飲みすぎたの!?しょうがないな〜。今度は勘弁してよ?」
 
 この子達は2年後、弱小公立の常識を跳ね飛ばし、大変大きな結果を残す。そして、この子達に「許す」という精神を育てられただけで私はもう何も言うことがない。

 この子達はバスケットを始めた時期が遅くかったが、運動神経だけは抜群だったことが唯一の救いだった。ミニバスの経験者ばかりの集まりの私立に、太刀打ちできる方法はほとんどなかったが、私が考えたのは、自分の個性だけを徹底的に鍛えることだった。例えばドリブルがうまい子ならドリブルだけを、3ポイントが得意な子なら3ポイントだけの練習を徹底的にやらせたのだ。いいか悪いかは抜きにして。
 ある年の元旦、私が部屋で寝ていると電話が鳴った。キャプテンでポイントガードの生徒からだった。「先生が暇なら体育館を開けて欲しい。3ポイントの練習なら一人でできるから」というような内容だった。当時私は学校の近くに引っ越してきていたし、田舎に帰る予定もなかったから正月は暇していたので、「まぁしょうがないな。開けてやるよ」と答えた。
 そうして学校に来てみると、校門前には部員全員がそろってニヤニヤしながら私を待ったいた。やられた、と私は思ったが、私の頬が緩んでいたのはばれていなかったと思う。
 彼らは、試合の日には前日から会場校の校門前で野宿するという奇妙な習性があった。練習が厳しかったから、朝が弱い子がほとんどだったからだと後で聞いた。しかし謝るつもりは私にはない。
 休日はなし。土日はダブル、トリプルヘッダーで練習試合。試合後はランニング10キロとウェートトレーニング。今思い返してみると、気分が悪くなるようなメニューだったな。しかし退部者はゼロ。もちろん死亡者もゼロ。

 この子達は、「許す」という、人間の感情でもっとも高いレベルのものを自然と身につけていた。私は何度この子達に救われたことだろう。今ある世の中の争い事が、本当に小さく見える子供達だった。今、何してるんだろう。


 今日、ある方から、「いらないデジカメがあるので送ります」というメールが届いた。何も返せない自分に腹が立ったが、もう少しこのブログを続けようか、と私は覚悟したのだった。



 

あなたにおススメの記事

同じカテゴリー(昔話・思い出)の記事画像
瞳の向こうに
うれしい誤算が二つ
井の中の蛙 ~③~
井の中の蛙 ~②~
井の中の蛙 ~続き~
井の中の蛙
同じカテゴリー(昔話・思い出)の記事
 瞳の向こうに (2007-11-03 10:34)
 うれしい誤算が二つ (2007-10-03 12:36)
 井の中の蛙 ~③~ (2007-09-28 01:40)
 井の中の蛙 ~②~ (2007-09-27 13:39)
 井の中の蛙 ~続き~ (2007-09-26 09:19)
 井の中の蛙 (2007-09-25 12:12)

この記事へのコメント
教えられることはたくさんありますね。すばらしい生徒さんだったと思います。
Posted by いこう斎 at 2005年06月27日 23:37
続ける力は、自分だけのとは違う...いいお手本です。心の底から嬉しさが込み上げてくる瞬間が、まさにこれ...と思うのです。お金では買えないのです、これは。
Posted by 北の旅烏 at 2005年06月28日 04:04
札幌のUです。こんにちは。
許すという行為、生徒たちとの信頼関係が深く強固だったからですね。厳しさだけではこういう関係はつくれないですもんね。本当に良い話です。
Posted by ゲスト at 2005年06月28日 07:24
彼らと同じ時間を共有できたのは、私の財産でした。
試合中の彼らの掛け声は、「ドンマイ」ではなく「いいのいいの!次次!」でした。
そんな人生を歩んでいてくれると信じています。
Posted by ayappi at 2005年06月28日 08:17
Viajeです。
いい生徒さんに囲まれて幸せでしたね。なかなかそんな経験できませんよね。子育ても同じで育てながら親も子供からいろいろ学ぶのです。つづく
Posted by viaje at 2005年06月28日 13:14
>もう少しこのブログを続けようか
・・・に、えっ〜〜なんで、どうしてぇ〜〜です。毎日じゃなくてもいいです。
続けてください。お願いします。
絶対やめないでくださいね。
隠れFANなのですから・・・いえいえどうどうとFANですからね。
Posted by viaje at 2005年06月28日 13:17
だからもう少し続けますって。。
まだ生きてますから(笑)。
Posted by ayappi at 2005年06月28日 20:55
なかなか更新しない私が言うのもなんですが。。。
あ〜ぁ、よかった!
そうそうじゃがいもも植えましたか?
ちょっと気になって、お聞きしました。
Posted by viaje at 2005年06月28日 23:10
ばっちり植えましたよ。45個。。いったいどのくらい収穫できるのかな?
ところで札幌のUさん、めどは立ちましたか?
Posted by ayappi at 2005年06月29日 06:44
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
してはいけないミス
    コメント(9)