山村留学で田舎暮らし

　もう我が家の冷蔵庫は、秋刀魚だらけで破裂寸前。

　十日ほど前、近所のおばあちゃん達を連れて、１０㌔ほど離れた町のスーパーまで買い物に出かけた。年に一度のバーゲンで、おばあちゃん達は本当にいろいろなものを大量に買い込んでいた。冬の準備なのだろう。
　車を出してくれたお礼にと、おばあちゃん達は、そのとき箱買いした秋刀魚の何本かをヌカづけにして我が家に持ってきてくれた。遠慮しても無駄なので、快く頂いたのだが、みんながみんな、ヌカ秋刀魚をくれるのだ。秋刀魚をヌカにつけるのなんて、初めて聞いたし、そんなに何本も持ってこられても我が家では持て余してしまう。かといって断れないしなぁ。「トヨさんのヌカは塩が駄目。うちのヌカ秋刀魚を食べてごらん」とか、変なところで競っているからさ。
　そんな折、夕方に来客があった。神戸から永住で来られている近所のおばあちゃんだ。手には溢れんばかりに秋刀魚が詰まっている袋を抱えている。そう、「持っている」んではなくって、「抱えている」のだ。漁にいってきたらしい。ニコニコしてその袋を私に差し出した。さっき獲れたばかりだから、刺身が美味しいよ、と言う。私はお礼を言ってその秋刀魚を全部頂いた。
　おばあちゃんが帰った後、「我が家にはいったいどのくらい秋刀魚がいるんだい？」と、奥で家事をしていた家内に聞いてみた。「５，６０かな」、と家内がそう答えた。私は、「秋刀魚がどうしたの？誰か来てたの？」という家内に、「はいよ」、といっておばあちゃんからさっき貰った秋刀魚の入った袋を渡した。家内はその袋を訝しげに覗き込んで、「家にあるより多いね。パパが捌いてね？」と、それだけをいって、また家事をしに奥に戻っていってしまったのだった。
　
　やれやれ。


　秋刀魚の夢は見たくないなぁ。

　

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